バードの寝言 「サマーウォーズ」※長文失礼!

現在公開中のアニメーション映画、サマーウォーズを観てきました。
友人から誘われて全く予備知識無しで観に行ったら、おもいっきりツボを突かれました。
笑いも泣きもカワイさもカッコ良さもある、盛り沢山なエンターテインメント作品で大変面白かった!

大筋は数学の天才だけど内気で冴えない主人公が、憧れの先輩に彼氏のフリをしてくれと頼まれた事がキッカケで、世界の危機に挑む事になる…というよく聞くようなパターンのお話ですが、そこへ彼女の家族・親戚間の温かいつながりやしがらみのエピソードが加わり、仮想現実世界での事件と相まって、作品の広がりとエンディングへ至るまでの流れをキッチリ作り出していると思います。
メインの登場人物がこれまた多いので、主人公・ヒロイン含めて各キャラの扱いはやや少なめな気もしますが、その分みんなちゃんとキャラが立っていて、観終わった後も各キャラの印象がしっかり残りました。

予告編を見たときの印象では、懐かしい田舎の雰囲気を描いた作品なんだなーくらいにしか思って無かったのですが、実際に観てみたら実は仮想現実世界の敵と戦うサイバーパンクだったので、かなり意表を突かれました。
アナログな感じの田舎の大家族が力を合わせて、デジタルな敵に立ち向かうお話なんですね。
ずいぶんインドア派な展開なのに、作品の持つフンイキは眩しく暑い夏の情景そのもの。
そういった空気感の演出がまた絶妙で爽快感がありました。

舞台は現代とほとんど変わらない世界ですが、ネット上に構築された仮想現実世界OZが人間社会の中で大きな役割を担い、パソコンやテレビ、携帯端末などを通じて多くの人たちがその恩恵に与る近未来です。
ある部分では今よりずっと進歩した世界ですが、そこに生きる人たちは今と何ら変わらないごく普通の人たちです。
現実の世界、仮想世界のどちらでも等しく、人と人の温かいつながりが描かれていて、ほろりと泣ける作品になっていました。
コンピューターが普及した世界での事件を描いてはいるのですが、決して教訓めいたアンチテーゼとかにはならず、良い部分も危うい部分も肯定して描き、物語世界に組み込んでいるので見ていて気持ちが良かったです。

また、絵的にも楽しい作品でした。キャラクターデザインは基本的にややリアルタッチなのに、思いのほか結構表情演出の幅が広く、ゆでだこみたく真っ赤になったり、鼻血吹いてぶっ倒れたりとマンガ的な表現も多くて笑えました。
仮想世界のビジュアルもポップで明るい雰囲気の物なのが良かった。仮想世界のシーンでは、登場人物たちは可愛いデフォルメキャラのアバターとして活躍するのですが、そのデザインも十人十色で見ていて楽しかったです。

ちょっとでも興味を持っている方、観に行く機会がありそうな方、とりあえず観に行っておいて損はないと思いますので、ぜひご覧になってください。



書きたいことが多くてまとまらなかったので、以下にネタバレありで感想を書き殴り…。

健二と夏希の親戚が一丸となって、ラブマシーンとの「合戦」の準備を進めて行くあたりが小気味好くてワクワクしました。
仮想世界の敵なんか田舎の旧家じゃどうしようもなさそうなのに、それにバッチリ対処できるだけの人材と設備が、親戚間のネットワークのフル活用で続々と集結してくるあたりがもう、ね。
序盤では、大家族だけあってさすがにいろんな職業の人がいるなーと思ってたら、後々の展開で「この人たちの職業設定ってこの前フリだったのか!」と思ってしまい、何だか笑えました。

キング・カズマも操り手の佳主馬くん共々カッコ良かったです!この物語はある面、佳主馬の物語でもあるようですね。その活躍はもう一人の主人公と言ってもいい位。本作でヒーローと言えば断然彼ですね!(*^_^*)
世界の命運を懸けた一騎打ちに挑むも、敗北して「母さんと妹をまもれなかった…」と泣くシーンもアツいです。
アバター同士のバトルは、アクション専門に作画監督をもう一人起用して作っているらしく、キャラはカワイくともその立ち回りは結構本格的で、ゾクゾクくるものがありました。

一族をまとめる栄おばあちゃんもすばらしい方でした。今まさに混乱に対応しているだろうたくさんの知り合いに檄を飛ばす栄おばあちゃんの活躍が、まさに武将の末裔といった感じでそれだけでもうカッコよかった。電話してるだけなのに!
栄おばあちゃんと侘助の物語も良かった。夫の隠し子をも受け入れて愛する栄の懐の広さに心打たれるものがありました。会ったその日から侘助を受け入れていた栄に対し、人を傷つける道まで選んでまで栄に認められようとした侘助の心のすれ違いがとても悲しかった…。
その本来司令塔となるべき栄おばあちゃんが早々に亡くなってしまっても、遺志を継いで危機に立ち向かう家族と、おばあちゃんの間のなお固いつながりに涙を禁じえませんでした。

もうひとつ、OZにログインしている人々の書き込みが、ブーイングだったり応援だったりと、内容もその時々の状況によって変わり、世界中の人々が成り行きを見守っているというライブ感が出ていて良かった。これによってメインキャラクターと仮想世界にいる見知らぬ人たちの間にも、実はきちんとつながりがあることが描かれていて、クライマックスの展開でキッチリ重要な役割を果たしていたと思います。窮地に立たされたナツキに世界中のOZユーザーがアカウントを差し出してくれるなんていう熱い展開には、もう震えが来るほど興奮しました!

あと、翔太も自分のRX−7が他人にオシャカにされたら号泣しそうなもんだけどな、と思ったり、ラブマシーンの顔がゴジラシリーズに登場するロボット「ジェットジャガー」にそっくりだと思ったり(違、所々心の中でツッコミを入れてたりしましたが、物語とか構成ではあんまり違和感もなく楽しめました。
健二がOZのパスワードを解くシーンでは、どんな計算をしているのかちょっとでもいいからセリフに入れてくれると解りやすかったかなと思いました。

最後に、本作は書籍やグッズなどの展開もアツくて良かった。
パンフレットも4Pに渡るストーリーダイジェストから細かい作品解説、特に監督・主演以外のスタッフインタビューまで掲載されたしっかりしたもので、それだけでも楽しかったです。なにより花札のルールまで載っていて至れり尽くせり。
また、本作の作曲者は私的に「リターナー」の楽曲で馴染み深い方で、今回も様々な方向性の音楽を楽しませていただきました。サントラも即購入して聞きほれています。
個人的に映画は一種のお祭りみたいなものだと思っていますので、特に最近の外国映画の、パンフレットも薄いサントラは出るか出ないかもわからない…なんていう冷めたもんじゃなく、映画ってこうだろ!というノリが楽しめたのがとても良かったです。

折角なので、すっかり忘れていた花札のルールを覚えなおしてまた観にいこうと思います!